建築の質と官学民連携による景観まちづくり

以下、一般社団法人山梨県建築士会が発行する会報「建築士やまなし」No.65に掲載いただいた、私の活動のまとめでもある「建築の質と官学民連携による景観まちづくり」という記事を転載させていただきます。

-八ヶ岳周辺からの取組み実例-

どうしたら建築の質が良くなるか折に触れ向き合い、つくること伝えること協働することに対し数年前からそれぞれテーマに据えて、設計監理実務、高校などの講師、まちづくりでの協働に取り組んで来ました。

その中でも建築とまちづくりは表裏一体、密接な関係にあると感じ、様々な協働できる取り組みのスタートや運営に関わっています。

自然いろシート普及委員会

数年前、ブルーシートに変わる景観配慮型のYRシートに出会い、ある建築改修工事で木材養生用にそのシートを使うことになりました。

個人的には長らく色彩の重要性を強く感じていたのですが、その現場に携わった八ヶ岳周辺に住む建築職人たちも、待っていたとばかりに絶賛し、その6人でこの会を発足させ、仕入れ販売を行う中で様々な問題に出会い、一つ一つ解決しながら今も問題に取り組んでいます。

自然いろシート普及委員会ロゴマーク

八ヶ岳南麓風景街道の会

日本風景街道という国土交通省の施策がありますが、現在はここでの活動を中心に景観まちづくりに取り組んでいます。官民連携が前提のこの会は、市県国の担当のほかに、パートナーシップ団体として八ヶ岳周辺の民間9団体、その中には大学の研究室も含まれています。

毎月定例会を開きながら検討を重ね、年に3つほどのイベントや取り組みを進めています。風景を良くするには、個人や民間企業の所有物や公共の施設の他、法律のほか市県の条例まで、全体で考え解決していく必要があります。

日本風景街道ロゴマーク

自然いろシート普及委員会も、この風景街道に参加してから、景観への配慮という観点で共感をいただけることが更に増え、様々なところで取り上げて頂き、「山梨県美しい県土づくり推進大賞奨励賞」まで頂きました。建築士会でもご理解いただき「親睦スポーツ大会」などで使っていただくなど、広く愛される取り組みに発展しはじめています。

有限会社まちづくり小淵沢

この組織も八ヶ岳南麓風景街道の会の民間団体の一つで、経済産業省によるTMO、町をマネジメントする組織という位置づけでスタートし、今は中間支援という点で風景街道と同じ理念を持ち、こちらも資本に行政や公益組織が入っています。

ここには企業や行政ではなく住民主導となるような意識的につくった資本構成があり、利害関係の絡まない自立自律のまちづくりが進められています。

活性化の本質は一時の繁栄ではなく持続可能な潤いと捉え、縮小しながらも潤い続けるまちの土づくり的活動が、一つ一つの取り組みの根幹にあります。

まちづくり小淵沢では紙媒体の地域まちづくり情報誌「まちこぶ瓦版」を発行しています。先述の景観まちづくりに関する取り組みをはじめ、地域の歴史や行政政策、選挙や自治のあり方を専門家からの寄稿をいただき、地域のまちづくり的活動の掘り起こしなどを、出来るだけ分かりやすくまとめています。

まちこぶ瓦版13号1面

こういった活動の中で、この地域の様な行政規模での真の持続可能なまちづくりには、「ゆっくりと潤いは保ちながら財政規模を縮小していくことと、質の良いコミュニケーションの環境をつくり、潤いのある地域を築くこと。」が現代では求められていると感じます。

今までに多く見られた、イベント主体の地域活性化は、長期的には後戻りになるような要素を持っています。その真の持続可能なまちづくりが、急激な成長を強いられた20世紀の爪あとを癒やし、今後のまちづくりのスタンダードになっていくと、学術的な検証をいただきながら、現実の取り組みを通じて実感しています。

この地域そして山梨の風土から、まちづくりにおいて自然景観と地域景観への取り組みは、活き活きとした地域のためにも、都市部で暮らし癒しを求めて訪れる人々にも、間接的ですが求められています。

住民のまちづくりの取り組みとして風景街道は、良質な地域形成に一定の成果をあげられる取り組みとして、建築に携わる者としても建築ハードの質を高めるためのソフトの面で取り組めることとして、各地で定着していく必要性を感じます。

「地域の複数の市民団体の合意と、行政が連携で、景観まちづくりに取り組む。」この組織構造が肝心で、今後県内でも各地域で広がれば、地域間連携も次のステップとして考えられます。みなさまの地域でも、風景街道に取り組む切掛を探っていただけないでしょうか。

各地で地域おこしに取り組んでいる方々と、風景街道の様な官学民連携という現代社会で客観性ある土壌で、状況をお聴きし連携できることが、質の高い建築の割合を高めていきたいと願う、今の私の望みです。

建築士やまなしNo.65第9面

建築士やまなしNo.65表紙

引用元: 「建築士やまなし」PDF版 – 一般社団法人 山梨県建築士会.


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