先日、「山梨県建築士の集い」にて
「図面の外にある設計」というテーマでお話ししました。
設計というと、図面や建物そのものを思い浮かべる方が多いと思います。
もちろんそれは建築士の中心的な仕事です。
しかし私は、
設計はもう少し手前から始まっているのではないか、と感じています。
線を引く前に整えるべきものがある。
それは構造や法規だけでなく、
暮らしの重心や、人と人との関係性の構造です。
今回の発表では、
その「図面の外側」にある設計について共有しました。
当日のスライドと発表原稿を、記録として掲載します。
図面の外にあるもの
食卓とリビングの位置関係。
配膳台と調理台の距離。
キッチンから家族の顔が見えるかどうか。
ほんの少し配置を入れ替えるだけで、
暮らしは驚くほど変わります。
工事をしなくても関係性が変わることもあれば、
逆に、大きな工事をしても、
思ったほど暮らしが変わらないこともあります。
その違いはどこにあるのか。
私は、
そこに「見えない構造」があると考えています。
見えない構造を読むということ
宮大工が木を見るとき、
寸法だけでは判断しないでしょう。
その木が育った環境や癖を読み取り、
どこに使えば最も力を発揮するかを見極めます。
建築の設計も、少し似ています。
図面には描かれない
家族の関係性、
暮らし方の癖、
時間の使い方。
それらを整理しないまま形だけ整えると、
体に合わない着物のような住まいになってしまうことがあります。
制度や補助金は大切な道具です。
しかし道具を使う前に、
「どう暮らしたいのか」という重心が必要です。
いきなり工事を急ぐのではなく、
まず関係性を整える。
それもまた、設計の一部だと私は考えています。
福祉住環境との接続
福祉住環境でも同じことが起きます。
手すりを一本つけることで、
「行ける」「できる」「選べる」ことが増える。
つまり、
暮らしの稼働域が広がるということです。
しかし、
制度の限度額いっぱいまで使うことが目的になってしまうと、
本来目指していたはずの自立支援から、
少しずれてしまうことがあります。
関係性を整えた上で、
必要なところだけ建築で支える。
その判断をつなぐ役割が、
建築士にはあるのではないかと感じています。
建築をひらくということ
設計を、図面の中だけに閉じない。
暮らしと関係を、少しずつ編み直す行為として捉える。
それは、
建築を「つくる人」だけのものにしない、ということでもあります。
住まい手や福祉関係者が
関係性を整える視点を持ち、
必要な部分だけ建築と接続できるようになる。
そうした関わり方が広がれば、
修繕や更新を先送りするのではなく、
長く使い続けるための判断が、
社会の中で自然に増えていくのではないでしょうか。
おわりに
今回の発表は建築士向けの内容でしたが、
これは住まい手の皆さまにも通じる話だと思っています。
設計は、線を引く瞬間から始まるのではなく、
暮らしを読み解くところから始まる。
その積み重ねが、
建築をより社会にひらいていく。
そんな試行錯誤の途中経過として、
今回の発表を記録に残します。
もし何か心に残る点があれば、
ぜひ現場の話を聞かせてください。
図面の外側の話は、
まだまだ、これからです。